ぜんそく(原因)③
かつては、ぜんそくは気道の平滑筋のけいれんによって、気道が狭くなって起こると考えられていました。
しかし、最近の研究によって、気道の 慢性的な炎症が原因とわかってきたのです。 常に粘膜が赤くはれたような状態になっているので、気道が狭くなり、ちょっとした刺激にも過敏に反応してぜんそくが起こるのです。 これを「気道過敏性」といいます。 この慢性的な炎症と気道過敏性が、ぜんそくの正体といえます。 ぜんそく患者さんの気道の粘膜には、好酸球、リンパ球、マスト細胞(肥満細胞)、好塩基球、好中球などが集結しています。 これらは白血球の仲間で、炎症を引き起こしたり、悪化させたりする働きがあることから「炎症細胞」と呼ばれています。 この炎症細胞が関与してアレルギー反応を引き起こし、ぜんそくを誘発すると考えられています。
気管支炎やかぜによる気道の炎症は一過性で、回復とともにやがて消失しますが、ぜんそくではこのような炎症がずっと続いています。 ですから、発作が起きていないときでも気道の粘膜はむくみ、上皮細胞がはがれやすくなっています。 その下の基底膜や平滑筋も厚くなっています。 また、粘膜の分泌が盛んになり、痰も増えています。 常にこのような状態にあるので、ささいな刺激を受けただけで平滑筋が収縮し、粘膜もいっそうむくみます。 このため、ますます気道が狭くなり、ぜんそく発作が起きるのです。
なぜ、気道に炎症が起きるのか、その原因については、完全には解明されていません。
多くはアレルギー反応やウイルス感染が原因と考えられています。 アレルギー反応は、アレルギー体質(アトピー体質)を持つ人だけに起こります。 アトピー型の人は、根底にこの体質があり、気道にアレルギー反応が起こってぜんそくの炎症へとつながっていくのです。 私たちの体には、ウイルスや細菌などの異物の侵入を防ぐために免疫システムが備わっています。 アレルギー反応はこの免疫システムと深くかかわっています。
体に有害な物質が入ってくると、免疫細胞はそれを異物(抗原)と認識して攻撃し、排除するために抗体をつくります。 ある抗原に対する抗体を一度つくると、いつまでも敵を記憶していて、再度同じ抗原が侵入してきたら、すばやくその抗体を生産して撃退します。
このような、免疫システムのおかげで私たちの健康は守られています。 ところが、本来は無害のはずの花粉やダニ、ハウスダストのようなものまで有害物質と認識し、過剰に反応して抗体をつくってしまうことがあります。
すると、これらの物質が体に入るたびに、免疫システムが働くため、さまざまな不快な症状が出てくるのです。これが、アレルギー反応です。
ぜんそくの場合も、ダニやカビなどのアレルゲンに過剰に反応し、なんとか追い出そうとして気道を収縮させたり、洗い流そうとして粘膜から粘液を多量に分泌します。 これが、咳や痰。呼吸困難を引き起こすのです。 ウイルス感染は、このようなアトピー炎症をさらに悪化させる一番の原因になっています。