坐骨神経痛②
背骨の役割は、体を支えることと神経をまもることが主です。
背骨は医学用語では「脊柱」といい、椎骨という小さな骨がブロックのように連なってできています。
椎骨と椎骨の間には、椎間板というやわらかいクッションがあります。一つ一つの椎骨は、椎体と椎弓の部分に分かれ、椎骨が連なった脊柱の中心部は、管のように中空になっているため、「脊柱管」といいます。
この脊柱管の中に脊髄が収まっていて、第一腰椎のあたりで終わり、その先は、まるで馬のしっぽのように見えることから、この部分を馬尾と呼んでいます。
この馬尾は、腰椎部分の「腰神経」、仙骨部分の「仙骨神経」、尾骨部分の「尾骨神経」の3つに分かれます。
腰神経は、腰椎の左右のすき間から、仙骨神経は、仙骨にあいている左右5個ずつの穴から伸びています。
神経が枝わかれしている部分を「神経根」といいます。
腰椎や仙骨から伸びた神経は、左右1本ずつにまとまり、おしりと太ももの筋肉の中を通って足まで伸びています。
これが、「坐骨神経」です。
坐骨神経は、鉛筆ほどの太さで、長さは足先まで行くと1mにもなります。
ひざの裏側で大きく2方向に枝わかれし、一方は太ももの後ろからふくらはぎ、足の裏と足の指にかけての筋肉を支配し、もう一方は太ももの下半分の前側、すねの外側、足の甲と足の指にかけての筋肉と皮膚を支配します。
加齢のために腰部の脊柱管が狭くなる腰部脊柱管狭窄症や、椎間板が後ろに飛び出す腰椎椎間板ヘルニアによって、馬尾や神経根が圧迫されると、坐骨神経痛が起こるのです。
圧迫の具合や程度によって、症状のあらわれる場所が異なります。神経には、脳と脊髄からなる中枢神経と、中枢と体の各部分を結ぶ末梢神経があり、末梢神経は運動神経と知覚神経、自律神経の3つで構成されます。
運動神経は、脳や脊髄からの体の各部分に指令を送る、いわば出力の神経です。
逆に、知覚神経は皮膚や筋肉、関節などの末梢から、痛い、あたたかい、冷たいといった感覚を中枢に伝える入力の神経といえます。
自立神経は、血管や内臓などのはたらきを調節する神経です。坐骨神経は末梢神経のひとつで、脳から下肢に指令を伝え、下肢で感じた感覚を情報として脳に伝えています。
私たちが自由に下肢を動かしたり、痛みや熱の刺激を感じたりできるのは、坐骨神経がきちんとはたらいているからです。